『谷崎潤一郎犯罪小説集』 谷崎潤一郎著

谷崎潤一郎犯罪小説集』 谷崎潤一郎

たとえるなら、静物画のようなミステリーである。
松本清張がアクションペインティングなら、
こちらは、ねっとり、こってりと油を塗りこめてキャンバスを隙間なく埋め込んだ
濃厚な北方系ネーデルランド静物画なのだ。
ほとんどが登場人物の科白や独白による心理描写のオンパレードで、
私、こーゆーの、大好物。
おかげで、クリスマスのお買い物のために乗った電車を乗り間違えたまま、
反対方向の終点に着くまできづかなかった。

また、長〜い長いその科白まわしがいちいち格調高いことこの上なく、
いいもんはいい、うまいもんはうまい、のだなとつくづく感に入った。

でも、最後の「白昼鬼語」は潤一郎ラビリンスで読んじゃってたなあ。
中公文庫と集英社の編集方針に近似値の誤差があるとは思えないんだが・・・。