『春の雪 豊饒の海(一)』 三島由紀夫

『春の雪 豊饒の海(一)』 三島由紀夫

ここのところのマイブーム、
BTTB(バック・トゥ・ザ・ベーシック)ということで、
調子にのって読んでみた。


三島は、この4部作だけ、なぜか読んでいなかったので...。
でも、なんだか、ぜ〜んぜんっ、よくないの。
わかった、わかった、わかったって、あんたの言いたいこと。
という、古い友人のいつもの愚痴を聞いているみたいだった。


耽美で緻密な描写は、もうお腹いっぱいというより、
目や耳がとっくに肥えてしまって、
二重写しにしか見えなくなってしまったのだと思う。


すっからかんの若い脳みそに、三島や谷崎は、何か、
端から駒がさぁ〜っと並んでゆくような快美感があった。
それは、未熟な若者にとって、
まあたらしい文法や文体、新発見の定理や公式のようなものが、
来るべき未来に備えて、
続々配備されてゆく充足感そのものであったのだと思う。
まるで、お城の兵器庫のように...。


高校時代、ちょっとひねくれた国語表現の先生が、
「ダザイやミシマなんてーのは、ありゃぁ〜、ダメだね。
所詮、若者文学よ。」と一蹴していたが、う〜ん、然り!
「オトシマエをつけずに死んでしまうんなら、なんでも書ける。」


あっちの手が干乾びてしまったのか、
こっちの筋が伸びきってしまったのか、
なんか響いてこなくなったのは、寂しいものである。


ワタシもそろそろ、
老醜を晒しはじめる年代に突入してきた、ということで、
むしろ、喜んでいい現象かもしれない...。笑

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)