「なにわバタフライ」作・演出三谷幸喜

なにわバタフライ」作・演出三谷幸喜

おもしろいのに品がよく、クサしながらも傷つけない、
カラっとした笑いにもっていく、
ミヤコ蝶々独特のあのリズム感ある語り、
子供心にもなにか聴かせるものがあって、
関西育ちというのを抜きにしても、
ずいぶん親しんできた方だと思う。


こんな芝居があることを知らなかったものの、
誘われて見に行く気になったのは、
彼女を称した「浪速の喜劇女優」という語に
特別な感慨があったからかもしれない。


大学生の頃、場末の名画座なんかで古い日本映画をたくさん見たものだが、
そういう映画にミヤコ蝶々は、必ず出てきた。
たいがいがほんのチョイ役だっただけに、
小さな身体でひょっこりスクリーンにでてきて
すぐに消えていなくなってしまうのだったけれど、
毎回どれも、実にいい芝居をしていた。
目端のきくすばしっこい気性なのにおちゃらけているという
二重の役回りが板についていて、
彼女が出てくるたびに、スクリーンの中がピリっと小気味よく引き締まっていた。


この芝居の宣伝コピーにあるのを見て、初めて、
なるほど、彼女は「喜劇女優」だったのかと合点してしまった。
フランキー堺とかハナ肇とか、喜劇俳優というのはいたとしても、
喜劇女優というのはちょっと、ノーマークでしたね。


私の記憶が定かならば、たしか日経の「私の履歴書」に
ミヤコ蝶々が連載されたことがあり、まあ予想通りびっくりするほど
波乱万丈で破天荒な来歴だったのを記憶しているが、
またそれが、いかにも芸の肥やしになっているというような按配で、
なのにまったく汚れた感じのしないのが不思議なところで、
ほんとうに稀有な女優さん、ゆえに、喜劇女優なのでしょうか。


なのに、戸田恵子の芝居の方は、意外と面白くなかったわね。
「そら、しゃーないやろ、どないもこないもあんさんの思い入れの方が
どえらいキツいねんからな、そんなもんいっしょくたにしてもーたら
こっちかてかなんわいな、じゃからしことゆーてんとぉ
さっさ会社いって稼いでこんかいっこのダァアホ!!!!」


って、彼女ならゼッタイ言うね!