「クラッシュ」2004年 ポール・ハギス監督

■「クラッシュ」ポール・ハギス DVD


ミリオンダラー・ベイビー」の製作・脚本を担当したポール・ハギスの初監督作品で、アカデミー賞作品賞とあるので、期待して見る。


ブツブツとブツ切りしてみせるパッチワークのようなストーリー展開はよくある手法だが、今まで特にその効用について考えてみたことはなかった。


のっけから人種差別の自虐ネタで始まるから、「あ、なんかめんどくさそう」、と思いながらも、シーンはどんどんブツ切りで進んでいく。
ついつい流れにまかせていたもんだから、そのしつこさや甘ったるさをダイレクトに受け止める隙がなかったといえばそれまでだが、まったく油断もすきもないとはこのことか、ラストでストーリーが収束するやいなや、目の前すれすれにむき出しのカタルシスが、いきなり、「どんっ」と、置かれてしまった。


人種差別を隣人の悩み事程度の距離感で淡々と見物していた私。
観者の感情移入をわざと宙ぶらりんに猶予しといたくせに、最後になって突然どさっと下ろすんだもん....。


しかし。
これがねらいだったのかしらとうれしくなる。


油断していたすきに急撃してきたという意味で、この映画の題名はクラッシュなのだろうかと、自分なりに勝手なオチをつけてみる。


しかし、マット・ディロンの容色の衰えにはびっくり。しかもたいがいヨゴレの汚職警官役で出てくるよ、この人。10代の頃のあの艶っぽいオーラはいったいどこへいってしまったのだろうか。
ま、オーラを消すのも演技のうちといえばそれまでだが。



■「ブロークンフラワーズ」ジム・ジャームッシュ DVD


はっきりいって、私のまわりにも十分ありえるちょっと変わった身近なお話を、淡々とカメラに納めただけでしょっ、アンタ!ポンッ!(=肩をたたく音)と、声をかけたくなるような映画がこの人の映画。
毎回ほぼ大好き!
フツーの人のちょっとフツーでない話をフツーでない監督がフツーに撮ってる感じがいつもサイコーです。


DVDの監督コメントによれば、
偶然の出来事や成り行きみたいなものこそが大事なのであり、また、感情や人間同士の絆など神秘的なものこそ、人生を導き形作るに足るものだと思ってる。世の中は合理的なものは案外少なく、ほとんどが無秩序で感情のようにコントロールがきかないことばかりだ....。


そうでしょう、そうでしょう....、そうでしょうとも。(笑)