NHKトップランナー「映画監督 西川美和」

NHKトップランナー「映画監督 西川美和

なにしろ、前作「ゆれる」がとびっきりよかったし、
オダギリジョーに「カントクって変態ですよね」とか言われてるし、
真木よう子をあんな風に使うところも、いやらしくて、
そもそもがオダジョー目当てで劇場に入った私の不純な動機も、
あながち、まちがってはいなかったかも・・・
と深く考えさせられた放送。


一般に、ものを創る人種の中でも、
だいたいこうゆう感じの人であれば、
おおむね、その作品にまちがいはないだろう、
という妙な尺度が、私の中にはある。


人物像は「意外にもそれほど破綻していない」というのがそれ。
目のつけどころはアブノーマルなのに、
それを昇華させるプロセスは限りなくノーマル。


矛盾がない人に魅力は感じないとか、
白か黒かではないグレーゾーンに強烈にこだわるとか、
20歳ぐらいで自分が女であることに観念したとか、
意外にも、平凡なマイノリティだと思った。


いや〜な女の人を描くので女性に厳しいのかと思ったらそうでもない。
曰く「女の美徳ばかりを描いた映画だと、
世の中の大勢の女の人はフィルムの中に
自分の居場所を見つけられないと思うし、
自分もそうだったから。」だって。


ああ、私もそうだったのか!と思わず唸ってしまった・・・。


映画監督なのに、現場というものに、まるで自信がないんだそうだ。笑
そこが自分の不器用さだとわかった上で、オリジナル脚本にこだわる。
予想外の事態が起こって現場がどんなにパニックになったとしても、
脚本という全体を示す方向だけは自分が一番理解している、
ただもうその一点だけを頼りに、身も凍るような現場に立っていられる・・・。


ああ、この考え方で、い〜んだと、ふっと軽くなったのは私だけだろうか。
非常にまっとうで、ちょっと拍子抜けするくらい、素朴なスタンス。
それでいて、控えめなのか、傲慢なのか、わざと、わからない。


木訥として淡々と、時にシニカルな笑みを浮かべながら、
「私なんて、ただのぼんやりですよぉ〜、
ビール飲んで野球見ながら暮らしてます」と話すこの人の器量、
相当なもんだと思ったのは、きっと、オメデタイ私だけなのだろうか。笑

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