『駅路/最後の自画像』松本清張・向田邦子著

『駅路/最後の自画像』松本清張向田邦子

1年ほど前にテレビで見た2時間ドラマ「駅路」。
松本清張の原作で向田邦子の脚本なんて、
あったんだぁ〜と思いながら見始めたら、
深津絵里の凄みとラストシーンの美しい演出に圧倒されて、
うーんと唸ってしまったのを思い出した。
休日の昼下がり、何の気なしにのぞいた新聞のテレビ欄に
再放送とあれば、迷わずもう1回見るでしょう。


恐ろしいことに、セリフから演出から、全部なぞるように覚えてた。
私の記憶力がいいのではなく、脚本がやっぱりいいんだと思った。
いや、いいのか悪いのかはわからない。
はっきりいえるのは、どんな女子でも共感できる
見事なからくりになっているのだと、
2回見終えたあと、やっと気づいた。
向田邦子、やはり恐るべしである。


清張の原作と向田邦子の脚本が1冊になった本があるのは
知らなかったが、読み比べできて、とても興味深い。


清張の淡々とした小説を、
向田邦子が努めて艶っぽく脚色したところは、
登場人物のセリフにふんだんに詰まっている。

「しかしねぇ、四十代の終わりっていやぁ、男盛りじゃないですか。三年も奥さんと別居して、甘っ気のないほうが不思議な気がしますね。」

「裏切ったんです。裏切ったくせに心配で。居ても立っても居られないんです」

「口では言いませんけどそういう感じ、判るんです。『あたしたちを見なさい。』『愛情ってのはこういうのを言うのよ』そう言われてるような気がして.....」

だけど、
「女の幸せをはかりにかけたんです....」ってセリフ、
向田邦子の脚本にはなかったなぁ。
理知的に達観した感じがして少々野暮。


このドラマは「北の国から」の杉田成道がさらに
脚色・演出しているから、しょうがないとしても、
ラストの、湖の底からたくさんの写真が、
ふわぁ〜と静かに浮かびあがってくるシーンの美しさは圧巻。
そのときの深津絵里のアップの表情がじつにいい。
さすがの演出といわねばなるまい。
DVDになっていれば、ぜひ、おススメしちゃう一品です。


松本清張生誕100年記念作品
http://www.fujitv.co.jp/ekiro/index.html

駅路 最後の自画像

駅路 最後の自画像