『きもの』、『つゆのあとさき』

■「きもの」幸田文


たしか本棚にあったはずと、棚の奥をのぞきこんだら、あったあった、新潮文庫


汗をかいたメリンスの襟元から匂うむうっとした感じとか、羽二重がどれほど気持ちよいものか、縫い直しのごそっぽい銘仙とはどんなだとか、実感を伴った触感的な描写にいちいち感服する。


あと、江戸言葉やむかし言葉の、その軽快さ気持ちよさ。
「しながよくないねえ」

「子供に洗張りものを着せて、親が綺羅を張るつもりはありませんものね。」
「しんにおかいこぐるみで暮らしてきたんだろうなあ」
「気性ものだよ、その人は。」


単語レベルでもいちいち感にいる。
「気ぶっせい」、「粋上品」、「着手」(例:いまにいい着手になるよ)


裏表紙をめくると奥付には平成8年12月1日発行とある。
しおり紐の位置からして、確実に読んでいるはずなのに、
内容まったく思い出せず、再挑戦してみたが。
前よりもぐぅっと理解のいくものがあって、うれしい。


■「つゆのあとさき」永井荷風


いつの世も、女の渡世は、いばらの道で....