『アースダイバー』 中沢新一著
『アースダイバー』 中沢新一著
最近お気に入りの番組、「ブラタモリ」。
番組の最後に必ずタモリがつぶやく、
「土地の記憶は無くならないねぇ〜」というのが感慨深くて、
ほぼ毎回見てる。
ブラタモリは江戸時代の地図をベースに東京の地形を追っていくけれども、この本は、なんと、縄文時代の地層の分布をベースに東京を俯瞰していく。
なんでも、東京の土地は、縄文時代の洪積層(堅い土)と沖積層(砂地)の分布であらかた説明できるんだとか。
この著者独特のオカルト的な論旨には昔から、んなアホな的なまゆつばもなきにしもあらずなんだけれども、正月の手持ち無沙汰も手伝って、ちょいとかつがれてみようかしらん、と軽い気持ちで読み始めると、まあ面白いこと、どんどん引き込まれてしまった。
洪積層と沖積層のせめぎ合いの地形とは、とりもなおさず、海岸地形ということで、神社や寺院などの神聖な「無の場所」は、縄文地図でいうときまって、海に突き出た岬や半島の突端部にあったことがわかっている。
岬のような水と陸のはざまに強い霊性を感じた縄文人は、そこに古墳をつくり、神社や寺院を建てた。
必然的にそのまわりには広大な墓地がひろがってゆき、時代とともに入り江も埋め立てられ、天皇家の所領になったり、戦後に資本家に買い上げられて高級ホテルが建ったりしても、やはりそこには古代から脈々と続く、えもいわれぬ霊性を帯びた独特の雰囲気をかもしだしているんだそうな。
歌舞伎町や渋谷円山町界隈も、この論でいうと、そうとう納得させられる。
西新宿のあたりは、縄文海進期の湿地帯で、じめじめとして薄暗い沼地だったり、渋谷にいたってはよくいわれるように、谷底である。
水=エロティシズムというのが、これほどまでに直結しているのものなのかと、合点がゆく。
東京の街歩きが、俄然楽しくなる一冊です。
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『六条御息所 源氏がたり 一、光の章』 林 真理子著
『六条御息所 源氏がたり 一、光の章』 林 真理子著
そんで、さっそく、読んでみる。
この本は、「源氏物語」の林真理子訳とかではなく、
源氏物語をモチーフにした語り部風の小説である。
このことをよおく念頭においた上で読まなければならないのが
とても残念なのだが....。
さぁ〜っと読めておもしろかった。笑
これ、意外と、重要。
「わかりやすい」ということをそのまま、
「おもしろい」に直結させるのは、あんがい難しいものである。
かといって、難しいからおもしろいのかといったらそうでもない。
こと、源氏物語に関する限り、
ここのバランスをうまくとることがキモである。
大御所の現代語訳版なんて、学生時代に取りこぼしたら最後、
よっぽど覚悟をきめなければ読むこともないわけで。
ただでさえ登場人物の名前や係累がわかりにくい上に、
現代ではありえない一線を越えているのにさらりと描写されているところが、源氏物語の第一の難所だと思う。
特殊な設定の中での、源氏の君と女君たちの心の内、底、綾なんかの混沌錯綜としたところをこれから先、十分に楽しんでいければ、この物語の本丸を取ったと心得よう、という、鷹揚な気持ちが大切。笑
ま、大御所の現代語訳版は、老後の楽しみということで、
易きにながれるこの性格が、ああ、うらめしい。
- 作者: 林真理子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 単行本
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『誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ』 林 真理子、
『誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ』 林 真理子、 山本 淳子著
録りだめしたビデオ録画を整理していたら、
ちょっと前にNHKでやっていた源氏物語の番組が残っていた。
京都宇治市の「源氏物語ミュージアム」で開かれたシンポジウムで、
林真理子の論に、なるほどと思う。
源氏物語を読み解こうとするに、現代社会と置き換えてみることほど
あさはかなことはない、と一刀両断。
遠い平安の時代で、しかも宮中が舞台の、全きフィクションの世界を
現代のモラルでそうそう理解することはできないのだから、と。
源氏物語、漫画でも読破したことがない私。
俄然、興味が沸いてきて、さっそく、このご本を手に取る。
案の定、言われてみれば、そうだね!、とか、
へぇ〜っ、変だね、それ!ってなことが実に明解で、
そうだったのか、源氏物語!という、
かなり時期のズレた源氏ブームが私にもようやっと
来ちゃった感じ?
大丈夫、こんな私にもしっかりとDNAに、
やまとごころが刻まれていたわけで、
この暮れの年の瀬、新年を迎えるにあたって、
いかにも喜ばしいことではないか。笑
誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ (小学館101新書)
- 作者: 林真理子,山本淳子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/10/06
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『女徳 』 瀬戸内寂聴
『女徳』瀬戸内寂聴
もし、あなたが女に生まれたのなら、
これほどまでに究極で濃厚な人生を歩んでみてはどうか。
という、理想型を示してくれているのかもしれない。
あれもこれもぜんぶやっちゃって、その旨みも苦味も、
双方ともに、味わいつくしてこそ、女冥利に尽きるって?
そんなの、意外とおもしろくないんじゃないか。
来る日も来る日も、結局は現実的な問題に振り回されるだけで、
当人に物事の象徴的な本質を理解する力でもあればしめたものだが、
あったところで、こんどはそれを、何か別のものに昇華する術でもなければ、
所詮、コマネズミの生活といっしょじゃあないか。
というギモンが、むか〜しからあるんだけど、どうかね。笑
- 作者: 瀬戸内寂聴
- 出版社/メーカー: 新潮社
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『さまよう刃』東野圭吾
『さまよう刃』東野圭吾
社会派サスペンスである。
現代版のは、いろいろと考えさせられるけれども、
ストレス解消にはならないということに、いまさらながら気がついた。
ってゆうか、単に、少年法というテーマが
私には少々重すぎただけかもしれないが。
松本清張が好きなのは、ちょっと重いテーマでも、
時代背景がレトロでアンティークになってしまっているので、
プロットそのものを切り離して楽しめるから。
でも、現代劇は、解決したようで、
まだまだ本当に解決できていない事象もあって、
読後がなんだかあんまりよろしくない。
でも、『白夜行』は面白かったんだけどな。
- 作者: 東野圭吾
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『球形の荒野』松本清張著
『球形の荒野』松本清張著
第二次世界大戦と東京オリンピックという二重の時代背景に、
奈良・京都の古寺や家族の絆、父と娘の情愛もからんで、
しっかりと読み応えのあるミステリー。
やっぱり、さすが、ちゃんとしたプロット、書きはるんやわぁ〜と、
あらためて感動。
ドラマの方は、ぜんっぜん、オモロなかったけどねっ!
↓「2夜連続 松本清張スペシャル 球形の荒野」
http://www.fujitv.co.jp/kyukei/index.html
- 作者: 松本清張
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「ディア・ドクター」西川美和監督
「ディア・ドクター」西川美和監督
たしか、以前面白く見たNHKのトップランナーという
番組の中でだと思うが、
西川美和の評す、笑福亭鶴瓶像が、ふるっていた。
「あのひと、みんなにいいひとっていわれてるけど、
あんがいじつはそうでもないんじゃないか....」。
彼女の妙にニヒルな薄笑いが、この映画のすべてなのだろう。
関西では根強い人気の鶴瓶ちゃんをあんな役に据えたのはさすが。
「わし、ほんまはそんなん(名医)ちゃうねんっ!」って、
瑛太に苦しげに吐露するところが、しんみりと、おもしろかった。
鶴瓶にこのセリフを言わせたかったがために前後にストーリーがある、みたいな。
どんなにいい人と言われたところで、
いやほんまはそんなんちゃうねんって、
本人だけは普通、こっそり思うでしょ、
そう思うことのできる人が、
普通に本当のいい人なんだよ〜
ってゆうことがひしひしと伝わってきます。
最大公約数的なものに、まったく与しない少数派の人間は、
こういうひねくれた言い方をよくしますから、ご注意ください。笑
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